どうして私は病気にひっぱられなかったか

「ツレがうつになりまして。」を読んだ方とお話する機会がありました。



今日お会いしてお話した方もうつ病に関わっている方でした。その方に「貂々さんはどうして病気にひっぱられなかったのですか?」という質問をされました。家族にうつ病患者がいる人は病気にひっぱられて本人もうつ病になってしまう人が多いんだそうです。うつ病とまではいかなくても、うつ病患者とどうやって接していったらいいのかわからなくて、一緒には暮らせない……そんな風に思ってしまって悩んでいる人は多いんだそうです。

この質問をされた時、そうか、やはりうつ病って大変なんだなと今更ながら、改めて思い知らされた気がしました。

うーーん、私は本に描いた通りなんですね。なんですけども、やはりよく考えるとツレがうつ病になるまでがとてもイヤな時間だったんです。ツレは忙しくなった会社でいろんなことをガマンしながら会社に行っていて、その時の「僕はツライけど会社行くよ」というオーラがすごくイヤでした。特に月曜の朝がイヤでしたね。日曜の夜も。「あーあー明日会社か」というセリフが大嫌いでした。

私が全然売れてない漫画を好きなように描かせてもらってるのに、ツレはガマンして会社に行ってるということがイヤだったんです。私が好きなことをやってるのだから、ツレにも楽しく好きなことをやってもらいたいなって思ってました。

ツレのガマンがピークに達して私のイヤだなって気持ちがピークな時にお医者さんで「うつ病」の診断をされたような気がします。最初、ツレがうつ病と聞いて目の前が真っ暗になりました。えー、なんでー?うそでしょー?と思いました。

でもすぐに、イヤな思いをしてまで真面目に会社勤めしていたのに病気になってたんじゃしょーがないじゃん!と思って即刻「会社をやめなさい」と言ったのでした。その時はその後の生活の不安とかは全然頭になかったです。とにかく今、病気を治すことが先決!後のことはどーにでもなる!と思ってました。

そして、ツレが会社をやめて家で寝てばかりいる生活になってホッとしたんです。そりゃあ、家で1日中ゴロゴロしてる人がいると時にはうっとーしー!と思うこともありましたが、ツレが会社勤めしていた頃の「辛いけどガマンするよ」オーラがなくなっただけ私には気が楽になりました。

ツレはガマンをすることを美徳とする人だったような気がします。だから病気になるまでガマンをし続けました。男はガマンするモノと思っていたのかも。ツレは病気になってガマンしなくなりました。それはわがままになったわけではなく、普通に「イヤだな」と思ったことを「イヤだ」と言えるようになっただけです。でも、そうしてストレスを溜め込まず外に出せるようになったので良かったなあって本当に思ってます。

それで私はガマンをすることが大嫌いです。だからツレのうつ病にひっぱられなかったのかなあと思います。うつ病は看病や介護が必要な病気じゃないし、一緒になって私もウツウツとしててもしょうがないし、もーこーゆー病気なんだから仕方ないよと割り切るようにしてました。家族が一緒になって憂鬱になったって治る病気ではないですし……。ともかくツレがガマンをしなくなったこと(厳密に言うとできなくなったのですが)そちらの安堵感の方が大きかったのかも知れませんねえ。

うーんうーん、また考えてみます。

細川貂々のHPはこちら http://www.hosoten.com/
本のお仕事 | - | -

私はうつ病を理解しているのか?

いろいろ考えたことはみんな書き留めておこうと思いました。



「ツレがうつになりまして。」という本を出す前に「うつ病の本を出すくらいなのだからあなたはうつ病を理解しているのか?」と聞かれたことがあります。

答えは「理解できてません」です。

うつ病は、なる時は風邪をひくのと同じくらい簡単に気が付くとなってしまいますが、病状は風邪とは違ってかなりやっかい。人によって病気の原因も症状も違うようですし、治るまでの年数やきっかけも違うようです……。そしてほうっておくと自殺という「死」につながってます。こんな病気理解なんて出来ません。

だから、もしかすると理解しなくていいんじゃないかなあって思います。複雑すぎてわかんないもの。

どうしてこの本を描こうと決めたのかは、いくら新聞やテレビで「うつ病は流行っている」と言われても、実際に家族や身近にうつ病の人がいない限りどんな病気なのかわからなかったから、ちょっとでも「うつ病ってこんな風になるんだ」ってわかってもらえるきっかけになるモノが作れたらいいなと思ったからです。私もツレがうつ病になるまではどんな病気なのか全然わからなかったです。

だけどうつ病はツレを見る限り、ならなくていいのなら未然に防いだ方がいいんじゃないかって思います。一度なってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまうパターンの方が多いようなのです。ツレも2年たちましたが、雨が降ったり季節の変わり目はやっぱりダメになってます。まだ人がたくさんいる所にも行けないですし……。

でも、ひとつだけはっきり言えることは、うつ病になるってことは必ず意味があることだと思うのです。ツレの場合はガマンしてストレスを溜めすぎていたこと、そして「自分はスーパーマンでなんでも思ったようにできるんだ!」という勝手な理想像を作って型にはめてしばりつけていたツケが回ってきたこと。 病気になってそういうことがわかりました。

うーん、なんていうかすごく勝手な言い方かも知れないけど、もしもうつ病になっちゃったら、それはそれで仕方がないかってあきらめるしかないと思うんです。つらいけど、それが現実。そして病気と長くつきあっていこうと決めて生活も病気にあわせて変えていけば気楽になれると思うんです。

もうコレと一生つきあっていくのか、と思ったら逆にじゃあどうやったら楽しく生活できるようになれるか?と前向きに考えられると思うんです。「今だけの辛抱だから」って思ってガマンの道を選ぶとしんどくなっちゃうし、結局は「今だけ」じゃなくなっちゃうのだから、楽に病気とつきあう方法を考えた方がいいのではないかと思います。

なんだか、私は結局、楽天家なのかな?

細川貂々のHPはこちら http://www.hosoten.com/
本のお仕事 | - | -